6月になると、日本年金機構から「年金額改定通知書」や「年金振込通知書」が届く。「今年も来たな」と封も開けずに処分してしまってはいないだろうか。
実はこの通知書には、年金支給額の増減、税金や保険料の控除、支給停止の有無といった重要な情報が詰まっている。 内容をきちんと確認しなければ、知らないうちに年金が減らされていたり、扶養控除が反映されていなかったりと、気づかぬまま損をしている可能性もあるのだ。
通知書の正しい見方と注意点について、YouTube「おかんのお金守るチャンネル」を運営する秋山ひろ氏に話を聞いた。
6月に届く「年金通知書」とは?

日本年金機構より届く「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」。これらは、年金受給額や振込内容を知らせるもので、毎年すべての人に届くとは限らない。振込額が前回と同じであれば、通常は通知が省略される仕組みである。
しかし、2025年度は例外だ。4月に年金額の改定が実施された影響で、6月の振込額が変動している。そのため、今年は原則としてすべての受給者に通知書が送付されている。
届く通知書は2種類だが、今回は1枚にまとめて送付されている。「年金額改定通知書」は、支給額が変更されたことを知らせるもの。「年金振込通知書」は、2か月分の年金の振り込み額を知らせるものである。
「普段届かないからといって封を開けずに捨てる人もいるが、今年は危険」と秋山氏は注意を促す。通知書を見逃すことは、年金の減額や控除ミスといった“損のサイン”を見過ごすことにつながりかねないのだ。
「見なくていい」は大間違い!通知書に隠れた“損のサイン”
通知書が届いても、特に変わった点がなければそのまま保管したり、処分してしまったりする人もいるだろう。しかし、そうした中に“損をしているかもしれないサイン”が紛れていることがある。
秋山氏は、「通知に記載された年金額と、実際に振り込まれた金額が一致しているかを見ておいたほうがいい」と話す。通知書には総支給額が書かれているが、実際にはそこから所得税や介護保険料などが差し引かれている。こうした控除の内容に間違いがあると、本来より多く引かれてしまうこともあるという。

中でも注意したいのが、前年より受け取る額が減っているケースだ。通知書には「前年対比」の欄があり、差額がひと目で確認できる。「5000円以上減っていれば、何か理由があるかもしれない。見落とさないようにしてほしい」と秋山氏は言う。
扶養控除の申告漏れや支給停止額にも注意
通知書で見落としやすいポイントとして、もうひとつ挙げられるのが「扶養控除」や「支給停止額」に関する情報である。
「たとえば、扶養親族がいるのに申告が反映されていなかったりすると、本来より多く税金が引かれてしまうケースがあります」と秋山氏。実際には手続きをしていても、事務的な処理の遅れや記載ミスによって反映されていない場合もあるという。

また、「支給停止額」の欄にも注意が必要だ。たとえば、給与と厚生年金の「報酬比例部分」の合計が月51万円(2025年度)を超えると、その超過分の半額が差し引かれる「在職老齢年金」の仕組みがある。また、2つの年金(例:老齢厚生年金と遺族年金など)を受け取る資格がある場合も、制度上「一人一年金」とされるため、片方の年金がすべて停止されるケースもある。「通知書には理由が書かれていないので、金額が載っていれば、なぜ停止されているのかを確認したほうが安心です」と秋山氏は語る。
「おかしい」と思ったらどうする?対処法を知っておこう

通知書を見て「金額が減っている気がする」「扶養が反映されていないかも」と感じたら、すぐに確認することが大切だ。
「一番手軽なのは『ねんきんネット』の活用です」と秋山氏。扶養親族の申告状況や支給額の履歴をオンラインで確認でき、必要であればそのまま申告や訂正もできる。
仮に申告漏れなどが見つかった場合、過去の支給額は最大5年分までさかのぼって訂正できる。「知らなかったでは済まされないので、気になったら早めに動いたほうがいいですね」と秋山氏は強調する。また、通知書が届いていない場合や紛失した場合も、「ねんきんネット」で内容を確認できるほか、最寄りの年金事務所に問い合わせれば再発行の手続きが可能だ。
通知書をきっかけに、自分の年金を見直す習慣を

通知書を受け取ったら、まずは封を開けて中身を確認する。それだけで、年金の減額や控除ミスといった思わぬ“損”を防ぐことができる。とくに「前年より受取額が減っている」「支給停止額が発生している」といった変化は、何らかの手続き漏れや条件変更のサインである可能性が高い。
秋山氏は「通知書はしまい込んだり捨てたりせず、まず目を通して、前年と比べてどう変わったかを見てほしい」と話す。「これくらい大丈夫だろう」と見過ごしてしまう小さな違いが、将来の損失につながることもあるからだ。
年に一度の通知書は、自分の年金状況を見直す貴重な機会。面倒がらずにチェックすることが、“年金で損しない”ための第一歩となる。
1984年富山県生まれ。国語科教員として10年以上勤務。教えるプロ。ただし、お金の知識が無さすぎて税金対策はゼロ、50万円の投資で失敗など、マネーリテラシーは皆無でした。
おかんが年金を受けとるのをきっかけに、年金制度や社会保障について学び始め、FP資格を取得。現在はYouTubeをメインに「おかんのお金を守る」ための情報を発信中。YouTube ▶︎https://www.youtube.com/@okangadaiji X ▶︎https://x.com/daiji_hiro