【海外移住】70代でバリ島に移住した両親、毎月の暮らしにかかる費用は?

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ホリさん
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  • 厚生労働省HPより引用
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 定年退職後の両親はどこか退屈そうだったので、バリ島に誘ってみたんです——。そう語るのは、バリ島移住歴10年のホリさん。ホリさんの勧めで、70代の両親も2024年に移住を行い、現在は家族3人でバリ島生活を送っている。

 定年退職をきっかけに、日々の暮らしに張り合いを失う人は少なくない。厚生労働省の調査(令和5年度)によれば、精神疾患で医療機関を受診する外来患者のうち、65歳以上の割合は年々増加している。「やりたいことが見つからない」「誰とも話さない日がある」そうした状態が続くことで、心のバランスを崩してしまう、いわゆる“退職うつ”は、シニア世代にとって身近な課題だ。

 本記事では、70代の両親が、どのようにしてバリ島への移住を決め、退職後の「空白」をどう乗り越えたのかを伺った。

退屈そうだった両親に、バリ島移住という選択を

 ホリさんは、YouTubeチャンネル「バリ島旅行のみかた」を運営しており、2015年から現地に暮らして10年目になる。長年バリ島でのんびりとした日々を送るなかで、ふと、定年後の両親の様子が気になったという。散歩、テレビ、ラジオ、食事——毎日同じことの繰り返し。定年後の両親の暮らしは、どこか張り合いを失っているようにも見えた。

 そんな両親に、ホリさんは「一度バリ島に遊びに来てみなよ」と思い切って声をかけた。両親にとっては初めての海外。飛行機にもほとんど乗ったことがなかったが、「まあ行ってみようか」と前向きに応じた。約2週間の滞在を経て、帰国後、「住んでみない?」と提案すると、「いいね、じゃあ行ってみるか」と、驚くほどあっさりと移住を決めたという。

 「滞在中の両親はすごく楽しそうでした。退屈な日常から離れられたのが大きかったのだと思います」

 海外移住というと構えてしまいがちだが、ホリさんにとっては、あくまでも家族の心の停滞を打ち破るための、ささやかな提案だった。結果としてそれが、日常に張り合いを生むきっかけとなったのだ。

実際、バリ島移住にかかる費用はどれくらい?

 両親がバリ島での生活を選んだことは、大きな転機だったという。とはいえ、定年後の海外移住には「費用は?」「ビザは?」「準備は大変なのでは?」と不安を感じる人も多いだろう。そんな声に対して、ホリさんはこう語る。

「移住の準備は100点にしなくていいと思っています。最初は60点くらいの準備で十分。そんなに気を張らなくて大丈夫なんです。たいていのことは、なんとかなりますよ」

 実際、移住の初期はホテルやヴィラに滞在しながら家を探し、家具や家電をそろえる必要があった。出費はかさみ、最初の数カ月は月35万円ほどかかったという。

 「でも、暮らしが落ち着いてからは月10万円くらいで生活できているようです」

以下は、ホリさんが教えてくれた移住初期と現在の費用の内訳だ。

▼費用内訳

  • 移住初期

    • ホテル、ヴィラ代:10万円

    • ビザ代:10~30万円

    • 交際費:5万円

    • バイク、家電、雑貨代:5~10万円

  • 現在(月11万5,000円)

    • 家賃(1Rアパート):4万円

    • 食費:3万円

    • 光熱水費、ガソリン代:0.5万円

    • その他雑費:4万円

 「物価は日本より安いですが、アパートの家賃はそれほど変わらないこともあります。日本食やお酒はこちらの方が高いこともあるので、最初は注意が必要です」

 生活費はホリさんが支援しているが、両親には日本の年金と、売却した自宅の資金があるため、個人的な買い物は自分たちでまかなっているそうだ。

 また、ビザの取得も不安に感じる人が多いポイントだが、ホリさんはこう語る。

「リタイアメントビザという、基本的に50歳以上で取得可能なビザを取りました。費用は1年間で15万円、1年延長するごとに12~13万円必要です。1年更新で最長5年、その後も再取得可能なので、『まずは1年』という気持ちでいいと思います」

高血圧の薬を飲まなくなった。自由な生活が活力を与えてくれる

 移住後、両親の生活には大きな変化があった。

 とくに体調面では、これまでと比べて明らかに良い方向へ向かっているという。「両親は、バリ島に来てからすごく健康的な生活を送っていますよ。草刈りや買い物など、日にあたり体を動かす機会がグッと増えて、父は高血圧の薬を飲まなくなったんです」

 バリ島は一年を通じて温暖な気候が続き、日常的に屋外での活動がしやすい。

「四季がないからこそ、生活のリズムが崩れにくい」と話すホリさんは、移住の前に一度旅行や短期滞在をしてみることをすすめている。実際、両親も旅行を経験してから本格的な移住を決めた。

 また、医療面について不安を感じる人も多いが、ホリさんはこう説明する。

 「インドネシアの病院と聞くと、野戦病院のようなイメージを持たれるかもしれませんが、実際は清潔で日本とほとんど変わらない設備のところも多いです。日本人通訳がいる病院もありますよ」

 また、バリ島ならではのサービスもある。「母がデング熱にかかったとき、点滴を自宅まで打ちに来てくれるバイク便を利用しました。1回1万円ほどで来てくれて、無事に回復できました」

 体の変化以上に大きかったのは、気持ちの面だという。

「毎日が新しい体験の連続で、気持ちが若返っているように見えます。両親ともに本当に楽しそうです」

 両親の変化を語るホリさんはどこか嬉しそうだ。もちろん、小さなトラブルやケンカがないわけではないが、それでもバリ島での自由な生活は、きっとご両親にとって、とても良い環境だったのだろう。

シニア世代の移住は増えている。バリ島は自由さが魅力

 実際、ホリさんのもとには、移住を考えるシニア世代からの相談が増えているという。

 「多いときには週に10組くらい相談を受けています。医療面を心配される方が多いですが、実際の環境を知ってもらえれば、不安はかなり軽くなるはずです」

 では、バリ島という土地の一番の魅力はどこにあるのだろうか。ホリさんは「なんでしょうね」と少し考えたうえで、ゆっくりと話し始めた。

「インドネシアはいろいろな民族が集まっていて、多様性が自然に受け入れられている国なんです。だから、“多様性”なんて言葉をわざわざ使わなくても、お互いを尊重して暮らしている。そういうなかで、周りの目を気にせず、自分らしく生きられるのがバリ島の良さだと思います」

 日本とは文化も価値観も全く違う環境。だが、今の暮らしに閉塞感を覚えている人にとっては、心を軽くする選択肢のひとつになり得るのかもしれない。

 たとえ準備が完璧でなくても、「まずは行ってみる」「とりあえず1年住んでみる」——そんな柔軟さこそ、第二の人生を前向きに歩み始めるために必要なのかもしれない。


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《ババショウタ》

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