こんにちは、YouTube「おかんのお金守るチャンネル」を運営している秋山ひろです。今日は「任意加入制度」について詳しくお話ししていきます。漢字だらけで混乱しやすい社会保険の仕組みですが、なかでも国民年金の任意加入は多くの方にとって見逃せない制度です。一方で健康保険には「任意継続」という似たような仕組みもあったりして、どれが何を指しているのかややこしいですよね。そこで教員時代の経験も活かし、できるだけ噛み砕いてわかりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
1984年富山県生まれ。国語科教員として10年以上勤務。教えるプロ。ただし、お金の知識が無さすぎて税金対策はゼロ、50万円の投資で失敗など、マネーリテラシーは皆無でした。
おかんが年金を受けとるのをきっかけに、年金制度や社会保障について学び始め、FP資格を取得。現在はYouTubeをメインに「おかんのお金を守る」ための情報を発信中。YouTube ▶︎https://www.youtube.com/@okangadaiji X ▶︎https://x.com/daiji_hiro
任意加入制度とは「年金の後払いができるチケット」

結論から先にいうと、任意加入制度はお得です。そのため、入れるなら入った方がいい制度です。任意加入制度とは、一言でいえば「年金の後払いができるチケット」です。ふつう、国民年金は20歳から60歳までの40年間を期限に、毎月保険料を納める仕組みになっています。しかし、いろいろな事情で納められない期間があったり、自分でしっかり支払っているか不安なときもありますよね。そういうときに役立つのが任意加入制度です。60歳を過ぎても最大で65歳まで保険料を払うことができ、過去に払っていなかった分を補うことで、最終的に受け取る年金額を増やせるというわけです。

私自身も、この制度を近い将来に利用するつもりでいます。実際、「20歳から22歳までの間は学生特例免除を使って払っていなかった」という方は少なくありません。当時は月1万7,000円ほどの保険料を学生だけで負担するのは難しく、親が払ってくれなかった場合や経済的な事情があった場合には、免除を選択することが多いですよね。ただ、免除した分年金額は減ってしまいます。そこをなんとか取り戻したいときに、定年後の60歳から62歳の2年間だけ任意加入して払えば、40年間きっちり払った状態として扱ってもらえるのです。
このように、任意加入を利用すると年金は確実に増えます。最大では60歳から65歳までの5年間入れることが多いのですが、大半の方はそこまで長期で加入しなくても、たとえば学生時代の2年分だけカバーできれば大きなメリットがあります。事実、厚生労働省の令和4年のデータでは、国民年金を40年満額払った場合は月6万8,000円(これは2024年度時点の金額です)が受け取れるところ、実際の平均は5万円台にとどまっています。さまざまな事情が絡むとはいえ、学生特例免除などで満額に届かない人が多いことも、こうした数字に表れているわけです。
任意加入によって実際どれくらいお得になるの?

では、任意加入によって実際どれくらいお得になるのでしょうか。ここでは学生時代の2年間を免除した方を想定してみます。もし免除していた分を、60歳から62歳の2年間で「後払い」するとしましょう。2024年度の保険料を基準に考えると、月1万7,000円ほどを24か月分払うので、合計約40万8,000円になります。これによって、もらえる年金は月3,400円ほど増えます(年間だとおよそ4万円のアップ)。単純計算で10年受給すれば元が取れる仕組みで、それ以降は年を重ねるごとにまるまるプラス分が上乗せされるわけです。日本人の平均寿命が男性81歳、女性87歳といわれている現在、10年たってからさらに何年も受給が続く可能性は十分あります。つまり、任意加入は「ちょっと頑張って後払いしておくと、のちのち得する」制度といえるのです。

手続きも難しくありません。お住まいの役場や年金事務所に行けばすぐに申し込めますし、まとまったお金があるなら一括で払ってしまう方法もあります。しかも一括で払うと、割引もあります。また、途中でやめたいと感じたときは脱退することも可能です。たとえば60歳で退職してある程度貯蓄があるうちは任意加入を続けてみて、何か事情が変わったらストップするといった運用もできます。自営業の方や、50代後半や60歳前後で会社を辞めた方には特に知っていてほしい仕組みです。
任意加入制度の注意点

ここでいくつか注意点を挙げておきます。まず、任意加入はあくまでも国民年金を対象にした制度です。再雇用などで厚生年金に加入している場合は利用できない点に気をつけてください。次に、もともと40年間すべて納付している人には意味がないということ。免除や未納期間がある方が「後から埋め合わせ」するためのものなので、完璧に払っていたなら増やしようがありません。そして、いざ自分がどれだけ払っているのか忘れてしまったという人も多いと思いますが、ねんきんネットというサービスを使えば自分の加入記録を月単位で確認できます。かつて年金記録が大量にミスされていた事件などもありますし、一度はログインしてチェックしておくことをおすすめします。
こんなふうに、漢字だらけで「制度が複雑そうだな」と敬遠されがちな社会保険ですが、ちょっとした知識と手続きで長期的に見れば大きな差が出るケースも珍しくありません。一緒に勉強しながら、賢く制度を使いこなしていきましょう。