こんにちは、ファイナンシャルプランナーの松尾光剛です。投資と聞くと「難しそう」「大きく損をしそう」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、私たちの公的年金を運用している「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」のやり方を参考にすれば、投資の初心者でも安定したリターンを目指すことができるのです。この記事では、GPIFがどのような運用をしているのかを分かりやすく解説し、私たち一般の投資家がどう活用すればいいのかをお話しします。
公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国民年金と厚生年金の「積立金」を預かり、長期にわたって運用している組織です。積立金とは、現役世代が多かった時代に集まった保険料で使いきれずに残ったお金をまとめた“将来のための貯金箱”のようなものです。現在の保険料は基本的に今のお年寄りの年金に充てられるため、少子高齢化が進むと将来の給付が足りなくなるおそれがあります。その不足分を補うため、GPIFは積立金を国内外の株式と債券におよそ4分の1ずつ分散投資し、長い目で増やしています。運用資産は約260兆円に達し、世界の公的年金ファンドのなかでも最大規模です。

GPIFが得た運用益は、将来の年金給付を下支えしたり、私たちが支払う保険料の急な引き上げを防いだりする役割を担っています。市場は日々上下するので短期間の赤字が報じられることもありますが、2001年以降の運用実績を見ると年率約3.6%ほどの収益を確保してきました。
「国内債券・外国債券・国内株式・外国株式」へ25%ずつ分散投資

GPIFの運用方法は、シニアの方でもマネしやすい資産運用方法です。現在、GPIFは国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4つをそれぞれ25%ずつ組み込む分散投資の方針を採用しています。株式は値動きが大きく利益も損失も振れ幅が大きいのに対し、債券は比較的値動きが小さく安定しやすい資産です。この4種類をバランスよく組み合わせることで、リスクを抑えながらも安定したリターンを狙う戦略です。
人気の「S&P500インデックス」や「オルカン(全世界株式)」は、いずれも資産クラスとしては100%株式です。たとえばS&P500は米国の大型株中心、オルカンは先進国・新興国を幅広く組み入れて分散投資します。しかし、オルカンも全世界に均一に分散投資するわけではなく、約6割程度は米国株で構成されています。もちろん、個別株やその他アクティブファンドと比較すると十分に分散投資できますが、「もう少しリスクを抑えて分散投資したい」と思うシニアの方もいらっしゃるのではないでしょうか。GPIFの運用方法は、そうした「安定志向」のシニア投資家に向いている投資方法といえます。

GPIFの「リスクのある資産(株式)」と「リスクの小さい資産(債券)」を組み合わせて長期で運用するという考え方は、老後資金を貯める私たちにも応用できます。たとえば65歳から3000万円の貯金を取り崩しながら生活する場合、運用せずにただ取り崩すだけなら、早ければ90歳前後で資金が底をつく可能性があります。ところが、年間3%程度で運用しながら少しずつ取り崩していけば、100歳を超えても資産が残るシミュレーションが可能になるのです。
GPIFが想定しているように、国内外の株式と債券をバランスよく持つ「4資産分散」を個人が真似してみることで、同程度のリスクとリターンを期待できます。実際に投資を始めるには、証券会社でインデックスファンドを購入し、それぞれの資産クラスに振り分けていく方法がシンプルでしょう。特に、NISAなどの制度を活用すれば、より低コストでの長期運用が実現しやすくなります。
投資に必要なのは「分散」と「長期目線」

とはいえ、これはあくまで過去の実績に基づいた考え方で、未来の相場は誰にも分かりません。変動が大きい局面ではマイナスが出る可能性もありますが、重要なのは「リスクを許容できる範囲で、時間をかけて分散投資をする」ことです。GPIFも短期的には運用損益がマイナスになるときがあっても、長期的に見ると安定した利益を積み上げてきたわけです。
投資は専門知識がたくさん必要だと思われがちですが、基本的な仕組みと分散投資の考え方さえ分かれば、初心者でも始めることが可能です。GPIFの手法をお手本にして、まずはコツコツと長期目線で運用をスタートさせてみませんか。
1982年長崎県生まれ。「誰に相談したらいいか分からない!」という、60代以上の人の悩みを解決するお金の専門家。郵政事業庁に入り約20年間、「かんぽ」や「ゆうちょ」の渉外担当として勤務。その後、独立。保険や投資商品の販売を一切しない、ファイナンシャル・プランナーとして活動中。延べ1000名以上のお客さまの個別相談業務を経験。お金のことは「シンプルに」難しく考えない。人生を楽しむためのマネープランを提案。
※動画はこちら(【投資初心者必見!】真似するだけで年率3.6%?GPIFの運用方法を知れば、投資の基礎知識がわかる!カンタン投資法)